『さようなら』
「またね」
「今度ね」
遠くに離れてる人にだって
「またね(=来年ね)」です。
『さようなら』という日本語は
私にとって少し寂しい、時には悲しいニュアンスです。
昨年のベルリン旅行で宿泊した
想いでのホテル「ホテル・ボゴタ」が廃業となり
12月1日をもって歴史に幕を閉じたそうです。
この悲しいニュースは今年の夏
「もしかしたら廃業になるかもしれないそうです」
ベルリン在住のジャーナリスト、中村真人さんから
連絡をいただきました。
近いうちにまたベルリンに行こうかと考え
同時にまたボゴタに泊まれるのを
楽しみにしていたので
このお知らせは大きなショックでした。
今度は友達もベルリンに一緒に連れて行く予定で
高級ホテルしか知らない友達に
ボゴタを案内するのもとても楽しみでした。
ベルリン波乱万丈の歴史、
とりわけ芸術家達が翻弄された人生を
包んでいた空間。
ベルリンの象徴的な場所のひとつでもあった
貴重なホテル。
現在も若い芸術家の作品発表のサポートしたり
その姿勢は変わりません。
独特の空気、心地よい優しさは
一度滞在すれば感じるはずです。
タイプ・トリップしたような気分になる
魔法の空間でした。
キシキシ、ミシミシ鳴る古い階段や床を
歩くのが大変心地よかったです。
「五感」にすべて訴えてくる場所でした。
今でもあの感覚、感触は鮮明に身体が覚えており
一生忘れることはないでしょう。
長年愛されてきたホテルがなぜ今になって
廃業という終わりを迎えたのか。
中村さんの情報によるとそれは
地価高騰や欧米ブランド・ショップ、
世界的チェーン・ホテル建設などの
発展が急加速に進むエリアにあるがゆえの
経営不振という悲しい現実でした。
詳しくは中村さんのブログをご覧ください。
その経緯から現在に至るまで
写真つきで詳しくレポートされています。
中村真人さんのブログ「ベルリン中央駅」より。
※ 中村さんのブログは最新のリアルなベルリンの空気を
感じる事ができるおすすめのブログです。
音楽やアートはもちろん、変化の早いベルリンの現実を
素敵な写真と共に紹介されています。
ボゴタを救うための署名運動なと
いろいろあったそうですが
残念ながら結果は閉鎖となってしまったそうです。
中村さんのブログを読んで
ホテルとしてのあの場所がこの世から消えてしまう
悲しさと同時に心が痛んだのは
3世代に渡ってこのホテルを経営しながら
住んでいたという一家も
出て行かなくてはならないという事実。
(私が一番ショックを受けたのはこの現実です)
地価の高騰にかかわらず宿泊費を20年前のままで
提供し、若いアーティストたちのサポートも
していたそうです。
12月1日の最終日はオープンデーとして
全室を開放し、たくさんの調度品や絵画などが
オークションにかけられたとか。
私もベルリンにいたら何かひとつ
ボゴタの想いでになる物が欲しかったです。
日本に持ち帰ったボゴタのギャラリーの
パンフレットやポストカードなどは
大切にしていきたいと思います。
私が宿泊した部屋の壁には
ユニークな顔の絵が3枚飾っていました。
ウォーホールのモンローをもじったような。
この絵画もオークション対象で
結構な値段がついていたそうです。
次回、ベルリンに行った時
もうホテル・ボゴタではない
建築物を目の前に、ノルタルジックな
気持ちになるかもしれません。
同時に余計なお節介かもしれませんが
ボゴタを長年経営されたご一家のこれからの
幸せを願います。きっとベルリンのたくさんの
人達から愛される一家であると思います。
私が5日間滞在したとき
たくさんのスタッフの人達と接しました。
その中にこのご一家のどなたかと
接する事があったのだろうかと振り返ります。
一番印象にのこっている方で
いつも身なりのよいスーツを着た50代くらいの男性が
いました。
狭いフロントで電話を取ったり、キー渡したり、
質問に答えたり、同時にたくさんの事を起用に
こなしている方がいました。
「あなたはまるでマジシャンのようですね!」
私がそういうと
「なんて嬉しい言葉!いまの言葉で救われましたよ」
優しい笑顔で返してくれました。
夜、素敵な空間を見ていたら
「あなたは日本人ですか?」とまたその方が来て
「いま、日本人のアーティストの作品が吹き抜けのところで
展示されていますよ、とても素敵だから見てくださいね」
そのアーティストのポストカードをくださいました。
毎夜遅くにホテルに戻って
いつも一生懸命働いているその紳士の姿を見ると
安心したのを覚えています。
その方はオーナー一家の人ではないにしても
ホテル・ボゴタを去らなくてはならない人の一人です。
彼のこれからの人生も健康でたくさんの
愛に包まれていることを願います。
最後に一冊の本との出会いで
ホテル・ボゴタを知る事ができました。
この本に出会ってなかったら
私は一生このホテルを知ることができませんでした。
もう二度とここに泊まれる事ができないのは
悲しいですがそれでも
廃業の1年前に滞在できたことは
とてもラッキーな事です。
この本の著者
中村さんには感謝の気持ちでいっぱいです。
(現在は改訂版が発売されております)
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